最高裁判所第二小法廷 昭和38年(オ)671号 判決 1964年4月17日
上告人
田辺忠吾
右訴訟代理人弁護士
景山収
被上告人株式会社
東陽相互銀行
右代表者代表取締役
萩谷徳一
右訴訟代理人弁護士
野口利一
主文
原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所へ差戻す。
理由
上告代理人景山収の上告理由について。
論旨は、被上告銀行と主債務者である野田盛雄間の本件融資契約は二〇万円を貸付限度としたものであるから、被上告銀行が野田に四四万円を貸付けたとしても二〇万円をこえる二四万円は本件融資契約の内容から離脱した貸借契約といわなければならないところ、野田は融資契約による借入金中に一五五、〇〇〇円を弁済したのであるから右融資契約による野田の債務残額は四五、〇〇〇となつた筈であるのに、本件融資契約による債務の連帯保証人である上告人に対し二〇万円全額の支払を命じた原判決には、本件融資契約の解釈を誤つたか、または審理不尽理由不備の違法があるというにある。
原判決の確定した事実によると、被上告銀行と主債務者野田盛雄、連帯保証人上告人間に昭和二八年五月一二日に成立した融資契約は、金二〇万円を貸付極度額と定めていること明らかである。したがつて被上告銀行が昭和三〇年九月一四日右野田に対し貸付けた四四万円は、うち二〇万円は右融資契約に基づくものでありしたがつて上告人に連帯保証人としての義務が発生するものであるが、うち二四万円は右融資契約によるものとはいえないこともとよりである。その後野田は被上告銀行に対し一五五、〇〇〇を弁済したというのであるから、右弁済が右融資契約にもとづく貸付金二〇万円に充当されたのか、右契約によらない二四万円に充当されたかを審理確定したうえはじめて右融資契約による債務についてのみ連帯保証した上告人の責任範囲が確定する筋合であるのに、野田の債務が二八五、〇〇〇円残存する以上上告人は二〇万円の支払義務を免れないと速断した原判決には、本件融資契約の解釈を誤つたか審理不尽理由不備の違法があるものといわざるをえない。論旨は理由あり原判決を破棄し、さらに右充当の点を審理させるため原審に差戻すべきものとする。よつて、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(裁判長裁判官奥野健一 裁判官山田作之助 城戸芳彦 石田和外)
上告理由<省略>